おもな業務内容

当部のおもな特徴

 薬剤師81名(手術室5名、治験推進室2名、化学療法室4名、その他出向者3名を含む)、薬剤部専属SPD15名および事務員3名で構成されています。医師および看護師など医療従事者と連携をとりながら、薬物治療が適正に安全にそして効率よく行われるよう、積極的に活動しています。
また、当院は下記専門制度の認定施設となっています。
  • がん薬物療法認定薬剤師 (日本病院薬剤師会)
  • 認定薬剤師 (日本医療薬学会)
  • がん専門薬剤師 (日本医療薬学会)
  • 薬物療法専門薬剤師 (日本医療薬学会)
ここでは、薬剤部が行っている業務についてご紹介します。

調剤業務

 調剤室では、外来院内処方、入院処方の内服薬・外用薬の調剤を行っています。ここでは、処方せんを受け付け、処方された薬の内容・服用量・飲み方・相互作用(飲み合わせ)などのチェックを行い、必要に応じて医師に確認をおこない調剤しています。
 処方せんに疑問点や不適切な点がある場合には医師とディスカッションし、処方内容の確認を行ったり、適切な薬の内容・飲み方・服用量などを提言しています。また、服薬に関して必要な情報をお薬相談コーナーにて説明しています。
 現在、コンピューターシステムの導入により、処方入力時には併用禁忌薬、同種薬、他科との併用薬、投与量等のチェック、薬品のDI情報の提供が行われ医師の処方支援に大きく貢献しています。薬剤部へ送信された処方データが即各システム(薬袋印字システム・散剤監査システム・薬品情報提供書印刷・全自動錠剤分包機)に送られ、各調剤業務に取りかかれます。また、薬袋印字システムを介し処方せん・薬袋・水剤ラベルが印字されます。以上のように、薬剤部は調剤を通じて、薬の品質、有効性、安全性の確保に努めています。

注射薬品調剤業務

 入院における治療には、多くの注射薬が使われています。注射薬は一般的に効果が強く、その使い方には特に注意が必要です。このため、当院薬剤部では注射薬も内服薬と同様に、処方せんによって適正にかつ安全に使用されるシステムをとっています。
 また、無菌室にて厳重な管理を必要とする患者の注射薬や全入院患者の抗悪性腫瘍剤の調製を行っています。

医薬品情報業務

 新しい医薬品が次々と発売され保険診療では、数多くの医薬品が治療に使用されています。しかし、それぞれの医薬品が適正に使用されるためには、個々の薬剤の適正使用に関する情報が不可欠です。このため、医薬品が有効に安全にそして適正に治療に用いられるよう必要な情報を収集し,医師,看護師など院内の臨床部門へ情報を日々提供しています。なかでも発売後、それまで分からなかった副作用が発見されたりすることがあります。
 このため、特に副作用情報は最新の文献から情報を収集し、できるだけ早く医師へ伝達できるよう情報収集活動を行っています。また、当院では電子カルテを導入しているため、その薬剤に関するマスタ管理も行っております。その他、氾濫するさまざまな情報の中から必要な情報をまとめ、「医薬品情報(定期)」、「薬剤部ニュース(随時)」、付属4病院共通の「医薬品集」などを発刊しております。

薬剤管理指導業務

 当薬剤部では重症部門を含む23病棟全てに専任の薬剤師を配置しています。病棟における薬剤師の役割は医薬品の適正、安全、効率的な使用を支援することです。患者さんへ薬の飲み方や、効果、副作用、薬の飲み合わせなど、正しい薬の服用方法を説明します。
 また、直接患者さんから症状をうかがい、検査データなどを確認することで、薬の効果が十分発揮されているか、また副作用が出ていないかチェックします。万が一薬の効果が不十分であったり、副作用が疑われたりするときは、主治医と相談して薬の変更などを提案しています。
 医師、看護師など他の医療従事者からの薬に関する質問や相談を受けることもあり、病棟における薬剤師は医薬品の適正、安全、効率的な使用のために重要な役割を担っています。

麻薬管理業務

 麻薬は麻薬及び向精神薬取締法でその取扱いや保管方法が厳しく規制されています。麻薬管理室では主に、麻薬の出納管理・検収および保管・管理・廃棄に関する業務をおこない、麻薬が院内で適切に管理・使用されているかを確認しています。
 当院では麻薬管理者を薬剤部長とし、他に麻薬担当者をおき、麻薬の管理業務を行っています。

薬品管理業務

 院内で使用する医薬品の発注、在庫管理、品質管理、院内各部署への払い出しなど、経済面も考慮して幅広く医薬品の管理を行っています。
 当院では、経営戦略の一環として、外部委託によるSPD(Supply Processing and Distribution)方式を導入することで病院が在庫を抱えることなく、使用した分だけを支払う管理方法に変わり、在庫金額の削減が可能になりました。これにより過剰在庫・期限切れ・緊急手配などの問題を解消し、薬剤部に寄せられる沢山の業務を円滑に行えるようになっています。

製剤業務

 厚生労働省が認可した医薬品が、保険診療上の治療対象となります。しかし、必ずしも規定医薬品では対応できない場合もあります。製剤室では、治療上有効で必要ではあるけれども、市販されていない薬や剤形(軟膏、点眼薬、吸入薬、注射薬、検査試薬など)を、病院内の審査機関にかけて製造許可が得られた薬品を作り、薬物治療に提供しています。
 また、医薬品の中には容器から出して直接使うのではなく、他の薬と混ぜ合わせたり、希釈したりすることが必要なものも数多くあります。これらをその都度病棟やベッドサイドで混合するのではなく、製剤室で一括して混合調製、または滅菌操作をすることによって、品質を確保し医療安全の向上の一翼を担っています。

外来化学療法室

 外来化学療法室とは、外来患者さんを対象とした、通院しながらがん化学療法の点滴(注射を含む)治療を行う専用室です。ここには、がん専門薬剤師やがん薬物療法認定薬剤師といった専門性の高い薬剤師が常駐しており、正確で安全な治療が行われるよう処方(点滴・内服)のチェック、治療法(レジメン)の管理、注射薬の調製などを行っています。また、お薬の相談や副作用症状の確認を行い、医師や看護師とともにチームとしてその対策や治療にあたっています。
 さらに、当院はがん専門薬剤師研修施設に認定されており、一人でも多くのがん専門薬剤師やがん薬物療法認定薬剤師を養成するために、後進の指導も行っております。

薬剤師外来1(抗がん剤服用患者)

 近年、がん化学療法のほとんどを外来で実施できるようになり、また新たな経口抗がん剤の開発により内服による治療を受ける患者さんも増えています。効果的かつ安全に治療を実施することを目的に、当院では「がん薬剤師外来」を開設し、内服抗がん剤、注射抗がん剤を施行する患者さんに対し、がん治療に関する専門的な知識を有する薬剤師が説明を行っております。
 「がん薬剤師外来」では、まず治療開始前に効果や副作用、治療スケジュールなどの説明を行います。次の受診時からは医師の診察前に面談を行い、内服状況や副作用の発現状況を確認し、その情報を医師へ情報提供し、副作用に対する薬物療法の提案なども行っています。

薬剤師外来2(入院患者支援)

 患者さんが手術や検査を目的として入院された時に、例えば出血を助長する作用を持つ薬剤を服用していた場合、それらの薬剤の効果持続時間が長いため、予定されていた手術や検査を延期・中止しなくてはならないケースが散見されています。また予定通り手術を行うとしても、そのような薬剤を服用していることで、手術の安全性が低下する懸念があります。このように、手術前に中止を検討する必要がある薬剤を服用していることで、手術が延期または中止になる、または安全な手術が行われない可能性があるため、手術前に患者さんが常用している薬剤を確認することは、患者さんの利益と安全を守るためにとても重要な業務です。
 そこで、当院では薬剤師業務の外来部門への展開として、2018年4月より患者支援センター(Patient support center;以下PSCと略)において入院前の常用薬の確認業務を開始しました。後日入院が予定されている患者がPSCで看護師から入院に関する説明を受けるタイミングで、薬剤師も患者と面談を行います。
 業務内容としては、手術の延期または中止を防ぐため、また手術が安全に行われるようにするために、患者さんが常用している薬剤の確認をすることで、手術や検査前に中止の検討が必要な薬剤についてスクリーニングを行います。該当薬剤の中止または継続するかを主治医に確認し、患者さん自身が中止指示について正しく理解されているか再度確認します。併せて、常用中のサプリメント・市販薬、薬剤アレルギー歴についても確認を行っております。
 PSCでの薬剤師による入院前の常用薬確認業務は、手術の延期・中止による患者さんの不利益回避、安全な手術の施行、多職種連携によるチーム医療の実践に貢献しています。

高度救命救急センター(CCM)業務

 当院高度救命救急センターは東京都の第3次救急医療施設であり、多発外傷などの重症外傷、脳血管障害、広範囲熱傷、急性腹症、各種臓器不全および心肺停止患者など複数診療科領域にわたる重篤な患者が搬送されてきます。そのような環境の中で、薬剤師は医師、看護師をはじめとしたメディカルスタッフと協力し、治療に参画しています。常に重篤な症例に対応するという緊張感がある反面、他のメディカルスタッフとの距離が非常に近く、チーム医療の一翼を担っているという充実感を日々得ています。
 薬の専門家として、投与ルートに基づいた内服薬の剤形変更、注射薬同士の配合変化回避のための点滴ラインの整備などを行っているだけでなく、患者の全身状態を器官系統別に総合評価することで、病態に合わせた薬剤や検査の提案、TDMを含めた薬剤の投与量調整などを行っています。また、日々のカンファレンスなどを通して、医師と共に患者の治療方針について協議を行っています。

中央手術室業務

 手術室では麻薬、筋弛緩薬など、管理について厳しく規制されている医薬品が多数取り扱われており、厳重な管理が要求されます。当院では、麻酔導入に必要な管理医薬品をセット運用しており、それらの払出、使用量の確認、保管を行っています。
 手術室担当薬剤師が5名常駐することで、術中に使用される医薬品管理、医薬品適正使用の推進を実行しています。また、多様化する術中使用医薬品の情報収集を速やかに行い、麻酔科カンファレンスに出席し情報提供しています。 医薬品管理業務に留まらず、病棟薬剤師と連携して術前中止薬の中止日の確認やアレルギー情報の収集を行い、必要に応じて麻酔科医・執刀医・看護師に注意喚起を行っています。
 薬剤師は、医薬品の管理、情報提供、注意喚起を行うことで、安全で円滑な手術の進行に協力し、患者様のリスクマネジメントに貢献しています。

外科系集中治療室(S-ICU)業務

 外科系集中治療室S-ICUは手術をした患者さんの手術後の容態が回復するまでを管理しています。手術直後は呼吸や循環機能を司る重要な臓器がうまく働かなくなるといった臓器不全を起こす、もしくはその恐れがあります。刻々と変化する患者さんの状態に対応し、医療スタッフが治療を行っています。薬剤師もチーム医療の一員としてS-ICUに常駐しております。
 高度な治療を必要とするS-ICUではハイリスク薬剤が多数必要になります。そのため薬剤師による医薬品の安全な管理供給は、一般的な病棟より重要な業務となっております。多数の注射薬を投与するため配合変化の確認は不可欠です。
 S-ICUで行われるカンファレンスに薬剤師も毎日参加しています。患者さんの状態をモニタリングした上で効率的な薬物治療の提案や、TDM、副作用や相互作用などの医薬品の適正使用に関する情報提供をカンファレンスでは行っております。
 このように当院ではS-ICUの患者さんの効率的で安全な薬物治療に薬剤師が貢献しています。

緩和ケアチーム

 当院薬剤部では、がん性疼痛等の緩和ケア薬物療法に積極的な関与をしています。そして、鎮痛薬の使用方法や副作用対策のマニュアルを整備・提供し、病院内の医療スタッフと協働のもと、患者さんの対応をさせていただいています。
 医師・看護師等で組織される院内緩和ケアチームのメンバーとして週5回の病棟回診を行い、現在は外来診療への関わりも行っており、安全で適正な治療が提供できるよう活動しています。また、近隣施設を対象とした勉強会を実施するなど、地域連携体制の構築にも寄与しています。

褥瘡対策チーム

 院内褥瘡対策委員会に薬剤師4名が兼任し、週1回行われる褥瘡回診にも同行しています。その際、使用されると考えられる薬剤を携行し、使用する際は薬剤の使用法などのコンサルテーションも行っています。
 特に中心静脈栄養療法が行われていたり、抗血小板薬を服用中などは、その治療法にも影響することがありますので、その際にも適切な情報提供を行っています。

専門領域

 現在薬剤部では、がん医療、緩和医療、感染対策、褥瘡、糖尿病、輸液栄養管理、小児医療、救命救急、集中治療、PET(Positron Emission Tomography)、手術部に専門の知識を持った薬剤師を派遣しています。
 これらは、高度な医療を薬物療法の面から直接現場でサポートし、医療における安全と有効性を最大限に確保することを目的としています。

治験管理業務

 治験業務は院内で行われている治験における治験薬の管理業務と薬物治験審査委員会の運営に当たっています。
臨床研究総合センター

その他

 当院薬剤部では、カンファレンス、論文抄読会、新薬勉強会、各部署でのミーティング、他部署への講習会、医薬品に関する医療安全講習会なども行っております。